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2008. 3. 31 No.587



『日本を元気にするには(その2)』 

 

ここのところ悲惨な事件が立て続けに起こっている。

テロではない殺人、それが今の日本で毎日のように起こっているのである。

特に若者の殺人には驚く。むしゃくしゃして暴力を振るうことがもっとエスカレートしているのであろう。はけ口のない憤りが誰とはなしに犠牲者を作ってしまっている。

週末のテレビに登場した加害者の精神分析を行うこの分野の識者のコメントによると、加害者は「いろんなものを捨てる覚悟」があると解説されていた。

すでに彼らは法の裁きを受けることを覚悟しており、そのために過ちを犯していると考えてもいいだろう。

自らの命を絶つ勇気は無いのだが、他人の命を絶てば自らの命にも波及することを承知しているのだ。

なぜこのような社会に日本はなってしまったのだろうか?

食べることも難しく、家族全員の暮らしもままならない時代ならいざ知らず、裕福とまでは言わないまでも普通の生活を送るのに何の苦労もない人間が殺人まで犯してしまう社会を我々日本人は深く考えていかねばならない。

日本の社会の構造は少子高齢化によって、若い世代が高齢者を支える世の中に変化しつつある。

ところが現実はその逆でいつまでたっても精神的に大人になれない子供を親が作ってしまっているのではないだろうか。

戦後の時代であれば、4〜5人兄弟は普通で、ある程度の年齢になれば家を出て行くのが当然であった。私の時代も兄弟は二人ないしは三人で全員が自宅に居続けることはできなくて、いずれは一人を残して出て行かねばならないと覚悟をしていた。

ところが一人っ子が多くなってきた現代においては、両親と一緒にいる生活、言葉を換えれば寄生することに抵抗のない子供と、子供が出て行かないことに何のためらいもない親という構図が見えてくる。

これでは高齢者が若い世代の面倒を見ることになり、若い世代は誰の面倒も見ないことになる。

ますます自立意識に欠けた若者が増えてくることになりはしないかと危惧するのは私だけではないと考える。

このような時代になって来たというのに、今の国会議員の面々には呆れたものである。

3月20日から日本銀行総裁は空席で世界の金融市場が大変な時に日本の政治家達はそんなことはどこ吹く風。

租税特別措置法もギリギリの選択でつなぎ法案で凌ぐ。

すべて与党と野党の次の選挙に向けた駆け引きの結果である。 

どちらが政権を握るのかなんて国民はまったく関心はないはずだ。(これは言い過ぎかもしれないが、少なくとも私はどちらでも日本は変わらないと考えている。)

いくつもの上場企業が買収防衛策を導入するのと同じである。導入してもしなくても経営の結果にはあまり影響はなく、経営者が保身を図る目的ではないかと株主や投資家は冷ややかな視線を送っているのに近い。

話は逸れてしまったが、政治家の本分とは何なのかをもっとよく考えて政治を行っていただきたい。

私には政治家のための政治に終始しているようにしかみえない。

さて、話は元に戻って若い世代が閉塞感を抱く社会をどのようにして改善していくか?であるが、アメリカ民主党の次期大統領候補者であるオバマ氏の演説にそのヒントがあるように思える。

日本の政治家は選挙のときに「私が選挙に勝ったら○○を実現します・・・」と公約する。

ところがオバマ氏は「私(I)」ではなく「我々(we)」または「あなた(you)」を主語にして話をする。つまり「私が実現する」のではなく「我々が実現する(We can)」「あなた方が実現する(You can)」と言っている。 

国民の皆さんは大統領候補の私よりもあなたがた国民の可能性を信じて生きていくべきだ。強いアメリカを作ることができるのは「私ではなくて皆さんそのものだ!」と国民を啓蒙・啓発しているのである。

そして啓蒙してくれた人物が大統領になることによって、啓蒙された国民は各種の不安から精神的に解放され頑張ろうと考えるのである。

日本は政治家と官僚が国民を愚民扱いしているが故にいつまでたっても国の行く末を自分たちが決めて良いと勘違いしている。

この時代を変えることが出来るのは、国民は愚民であると言う考え方を捨てることができる真のリーダーシップの登場ではないだろうか。

IではなくてWeとYouで話ができる人物こそ次の日本を背負える政治家であろう。

そんな政治家があちこちに登場しだしたら若者の心も救えるのではないだろうか。

確かそんな政治家が日本にも数年前に居たような気もしないではないが、あれは幻であったのかもしれない。

 

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東京IPO編集長 西堀敬  column@tokyoipo.com