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ネットイヤーグループ株式会社
(東証マザーズ・3622)
石黒社長インタビュー
自社ウェブサイトが最強のマーケティングツールになる


ネットビジネスと言えば「ベンチャー企業」を指すのが1990年代の相場だった。資金も商権もない起業したてのベンチャー企業が歴史のある大手企業を打ち負かすのに使った飛び道具がインターネットだったのだろうが、そのビジネスモデルは道半ばにして20世紀の終わりと共に終焉するのであった。

だが2000年に入りしばらくしてブロードバンドが普及してパソコンがいわゆる家電の仲間入りを果たした。そしてインターネットに常時接続が可能なパソコンの台数が急増したことによってインターネットサイトはメディアとして存在感を高めることになってきたのである。 

過去マス媒体と言えば、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌であったが、そこにインターネットサイトが割って入ってきて、ポータルサイトのYahoo!やネット通販の楽天などがネットメディアの先駆けとなり、次いでネットユーザーが参加するSNSやブログサイトが脚光を浴びるようになった。

そして最近はネット専業事業者が運営するウェブサイトではなく、BtoCの製品やサービスを提供する大企業が自社のインターネットサイトであるホームページを使ってマーケティングを始めたのである。

その大企業のインターネットを使ったブランド戦略を支援するのが、3月6日に東証マザーズに新規上場したネットイヤーグループである。今回はネットイヤーグループの石黒不二代社長に日本のインターネットを使ったビジネスの変遷と同社のお話をお伺いした。


事業内容

当グループは、インターネット技術を用いて、大手企業のウェブマーケティングを支援する会社。

いわゆる“SIPS”事業の単一展開で、「コンサルティング」、「クリエイティブ」、「ウェブソリューション」、「ウェブ運用」の4つの柱を軸に、企業のホームページや携帯サイト等の設計・構築・運用やネットからリアルにつなぐ広告プロモーションまで、総合的なウェブプロデュースのノウハウを持つ。メンバーは戦略コンサルタントやプロジェクトマネージャーをはじめ、クリエイティブ、情報デザイナー、アートデザイナー、システムエンジニア、といった各分野の専門家。状況に応じて新規事業の研究開発も手がける。

“SIPS”とはStrategic Internet Professional Serviceの略称で、企業のネット戦略の策定からシステムの運用まで、ネット事業に関するすべてを請け負う業者のことである。インターネット黎明期には「ネットを使ってマーケティングが出来る」という感覚が大半の企業には受け入れられなかったが、ネットを使えばマーケティング戦略で効力が高くなる「大企業」向けにこだわり、名だたる企業との取引実績を積み重ねた経験と、SIPSの概念がぶれることなく続けてきた専門性・クオリティの高さはどこにも引けをとらない自負がある。

実際に提供するサービスにおいても、例えば、ある商品の販促においてクリック数の向上等のビジネスゴールを明確に設定し、戦略を練り、設計→構築→運用→分析→改善、さらに、ネットの枠を超えたイベントや店頭でのプロモーション、マスメディアとの連動などを使って課題を一貫して解決に導く企画力を持つのは当社以外にないという。

企業にとってのウェブサイトとは、史上最も強力な「自社メディア」であると当社は定義する。テレビ、雑誌、新聞広告など他社媒体の限られたスペースでしかできなかったことが、ネット環境の普及によって、より自在に、無尽蔵に行えるスペースが用意された。例えば、これまで1つの商品を限られた条件の中でプロモーションするというやり方だった広告が、ホームページを戦略的に設計することで、その企業の全商品の紹介や、イメージ構築のためのコンテンツ配信などが可能になり、全く新しい形の効果的なブランディングの場として認知されるようになった。

日本の広告市場は、年間6兆円規模でほぼ飽和状態といわれており、その中でパイを取り合わなければならないが、メディア別に見ると、マス4媒体(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ)からネットへのシフトは益々進んでおり、ネット広告費の構成比(規模)は2000年から06年までの6年間で約6倍にまで増えた。これまでインターネットをあまり信用していなかった大手企業もようやく無視できない存在だと認識し、対策を講じ始めた結果がネット広告のシェア向上に見て取れる。

当社のビジネスモデルはネットビジネスの黎明期にはすでに完成していたものだそうだが、それを受け入れられるだけの市場が出来上がるのに10年以上の歳月がかかったといえるだろう。そして近年では、6兆円の内訳を広告スペースと広告クリエイティブという枠で大まかに分けたときの広告スペースの部分で使われていた資金が、クリエイティブに流れている。広告スペースは価格低下も進み、今後当社が主力とするクリエイティブの重要度は益々高まっていくだろう。

設立経緯

石黒社長は米国スタンフォード大学でMBAを取得し卒業した94年から、シリコンバレーでのインターネットビジネス黎明期のただ中で、ハイテクに特化したコンサルティング会社を経営していた。

94年はヤフーやネットスケープの立ち上がりの時代だが、当時、日本のネットベンチャーの比ではない程の勢いで、インターネットを使ったあらゆるビジネスモデルが乱立していたという。SNSの前身となるコミュニティサイトや、オークション、リバースエンジン、マーケティング、SIPSなど、今あるモデルはすでに完成された形で存在していたが、如何せん市場規模がまだ極めて小さかった為、どれも事業拡大に至らなかった。

 

当社が石黒社長を迎えたのは99年。その後多くのネット関連企業の盛衰があった。インターネットは確実に世の中のパラダイムを変えたとは言っても、ネットビジネスの劇的な利益創造は株式市場の予想通りには訪れなかったのである。「ネットがビジネスを変える」ところまでに至らなかった頃は、当社が専門とする市場も当然のことながらさほど大きくはならなかった。

2000年4月、米国での大幅な株式調整の数年後には日本のネットバブルも崩壊し、ハイテク不況に突入、方向転換を迫られた企業や、潰えた企業も日本では多かったという。そのような環境の中で当社は03年に利益の出なかったインキュベーション事業から撤退。ウェブマーケティングという概念が日本で認知されてきたのは近年のことで、各社がウェブサイト構築に資金を注ぎこみ始め、ネットイヤーグループが設立当初から標榜してきたサービスをようやく提供出来る環境が整ってきた。

今後について

当社の考えるコンペティターは、SIPS事業を展開している企業だけではなく、ネットに限らず総合的なマーケティングを手がける大手広告代理店全般。現在の売上げ規模(08年3月期:33億6,300万円)では、大手広告代理店との開きは現状では大きい。広告市場6兆円のパイを、当社の特性を生かしてとりこむチャンスがまだまだあると考える。現在の伸びを積み上げていくことはもちろん、今後の成長を加速させるようなチャレンジもしていきたい。クライアントサービスにおいては、成果報酬や売上げ連動での収入を得ることは難しいが、共同ビジネスという形で、報酬を分け合う場合もある。クライアントの保有する眠れる資産(コンテンツ)を有効活用して新しい事業を一緒に立ち上げるような場合も当社のノウハウが生きる。

今後もライフスタイルに合わせてインターネット環境は変化を続けるだろう。当社はディバイスやツールに特化しているわけではないので、その時々に見合った形で個々の顧客価値をあげていく手伝いをしていきたい。そのためにも、人材確保、特にインフォメーション・アーキテクト(IA)といったエンジニア+クリエイティブの分野で活躍できるメンバーを育成していく。

株主還元

昨年より配当を実施。配当性向3%であったが、今年は5%に。今後もこのラインは維持したい。今後の事業展開と今まで以上の成長を目指すための資金需要はあるので、内部留保も必要と考える。

業績(連結)の推移(百万円)

決算期
売上高
経常利益
当期利益
純資産
2006/3
1,607
105
206
1,062
2007/3
2,534
237
275
1,440
2008/3
3,363
324
382
1,990
2009/3(予想)
4,000
420
400

(注)2006年3月期の数字は単体での業績
(注)2009年3月期の数字は会社発表業績予想

■西堀編集長の視点

インターネットは世の中のビジネスの仕組みを変えると言われて来た。いわゆるパラダムシフトを起こすと考えられてきたのだが、実際は世の中に大きなプレゼンスを持つに至ったネットベンチャー企業はそんなに多く出てこなかったのではないだろうか。むしろインターネットの持つ特性を利用した新しいマーケティング手法の有効性に気付き、その利用方法を極めているのは歴史のある大企業であると言ってもいいだろう。

今までのマス広告メディアはそのほとんどがプッシュ型メディアであったが、インターネットはプル型メディアである。つまり興味のある人しかネット上に存在する特定のウェブサイトにアクセスすることはないのである。その自らの意思でアクセスしてきた人に確実に企業が訴えたいものを伝えることができるサイト作りコンテンツ作りは、単なるウェブデザイナーやクリエイターの域を越えた、戦略性がベースにないと価値がない。

ネットイヤーグループが立ち上げたSIPSの事業が今ここに来てやっと花を咲かせたのは、大企業のインターネットに対する認識が大きく変化してきたことにある。ネットバブル当時アメリカ発のSIPSが日本にも上陸したがいつの間にか姿を消してしまった。粘り強く大企業を啓蒙し続けたネットイヤーが周回遅れでやっと勝利宣言したといえるだろう。

だがここ数年間の経営の成長が今後も続く保証はどこにもないことも石黒社長は強く認識しているようだ。ネットバブルの崩壊で浮き沈みの激しい業界を生き抜いてきたネットイヤーのこれからの競争相手は企業に対して総合的なマーケティング支援を行っている大手広告代理店ということになりそうだ。事業規模では到底かなわないガリバーのような存在に向かって戦いを挑み続ける新たなマーケティング企業としてNo.1ブランドになることを目指していただきたい。


 企業DATA    ネットイヤーグループ株式会社
□証券コード 3622・マザ株価情報へ
□ホームページ http://www.netyear.net/
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