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コーヒーブレイク 〜 企業行動の効率化による価値の創造とアクティビストの役割 〜
東京IPOスタッフ CFA協会認定証券アナリスト 深井浩史
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ダルトン・インベトメンツのチーフ・インベストメント・オフィサーであるジョージ・ロブリー氏に最近の状況などを伺いました。ダルトンはMBOを提案するファンドの運営もしており、いわゆるアクティビスト型投資家と分類されることもあります。
Q:2年前に一度お話を伺いましたが、その後の事業環境はどうですか?
A:運用資産規模では米国での預り運用資産は2006年をピークに若干減少した。一方、国内からの預り運用資産は2007年に伸びた。合計では2年前より増えている。日本におけるアクティビスト投資への期待感という点では、外国人投資家の期待感は早く高まったものの、その後やや低下した感がある。一方、国内の投資家は遅れて入って来たという印象だ。
日本国内においては、企業やメディアのアクティビストに対する不信感が強く、活動が難しい面がある。日本でアクティビストとしての先例を作ったのは村上ファンドやスティール・パートナーズなどである。彼らは企業価値向上という正しい理念を掲げたものの、具体的な投資行動が不適切だった点や、説明不足による誤解を招いた点があり、アクティビストに対する悪いイメージができてしまったのは残念だ。しかし国内の証券市場のファンダメンタルズ(ここでは特に上場企業の配当性向、自社株買いの実施実績、これを含む総還元性向、ROE)を見ると、企業は資本効率の改善や株主への利益還元に積極的に取り組むようになり、例えば5年前との比較では大きな改善が見られる。こうした企業行動の改革についてはアクティビストの貢献は少なくないと考える。こうした点は正しく認知、評価してもらいたい。
【参考】
@日米企業の連結配当性向推移
日本 2002年 23.6% 2003年20.7% 2004年 21.4% 2005年 21.9% 2006年23.8%
米国 2002年 33.4% 2003年31.9% 2004年 36.6% 2005年 29.9% 2006年29.1%
生命保険協会調べ(日本)赤字企業を除くTOPIX構成企業(米国)赤字企業を除くS&P500構成企業
A日米企業の連結総還元性向推移
日本 2002年 46.8% 2003年34.9% 2004年 36.5% 2005年 36.2% 2006年37.0%
米国 2002年 70.2% 2003年63.0% 2004年 75.9% 2005年 83.2% 2006年90.2%
生命保険協会調べ(日本)赤字企業を除くTOPIX構成企業(米国)赤字企業を除くS&P500構成企業
B日米企業のROE推移
日本 2002年 4.0% 2003年6.7% 2004年 7.9% 2005年 8.9% 2006年8.1%
米国 2002年 7.8% 2003年12.5% 2004年 16.1% 2005年 16.7% 2006年18.1%
(日本)生命保険協会調べ、金融を除く上場企業 (米国)商務省
Q:投資先にMBOを促すファンドも運営しており、投資先ではサンテレホンが紆余曲折を経てMBOを実施しましたが、フジテック、日本精化などは応じませんでした。また日本市場全体を見た場合、オーナー企業を中心に実施例が出たものの、MBO実行時のTOB価格についての少数株主の反発、MBOのパートナーであった経営者とファンドがその後対立する例などがあり、MBOに対する見方も厳しくなっているように感じますが?
A:MBOはここ数年でようやく日本の資本市場で聞かれるようになった言葉。実施例も少ない。非上場化の例はあるが、その後に企業改革を推進して再上場を果たした例はキトーくらいしか例がない。まだMBOをいい悪いと評価するのは時期早尚である。当社の関与したサンテレホンについては、MBO後も株式を10%保有している。定期的に企業価値向上の取り組みの報告を受けているが、着実に進展しているようだ。数年後の再上場も十分期待できる。この案件もMBOの成果の検証までにはまだ時間がかかる。しかしサンテレホンが上場したままであれば、今頃株価はMBOした当時の半分くらいだったのではないか。MBOの結果、当時の株主は良い価格で売却することができてよかったのではないか。
MBOを始め、アクティビスト、LBO、ヘッジファンド、M&A、なども日本の証券市場においてはまだ歴史の浅いことだ。これらが本当にどういうものであるか認識、評価されて市場に定着していくには長い時間がかかる。プロダクト・ライフサイクルというマネジメントの概念があるが、それに例えればMBOはまだ導入期にある。
*プロダクト・ライフサイクル
商品の売上と利益の変遷を4つの段階で説明するモデル。人の寿命と同じように、商品の存在価値にも寿命があり、それは市場環境によって変化するというのが、プロダクト・ライフサイクルの考え方。商品の売上と利益の変遷を、導入期、成長期、成熟期、衰退期の4つに分類する。
Q:先行したアクティビスト・ファンドの行動で問題であったのは?
A:電源開発とTCIのケースでは、TCIは上場会社の意味、上場会社の責任というものをあくまで問い続けるべきだった。
ブルドッグソースとスティール・パートナーズのケースでは、日本の市場にとってマイナスの司法判断が出た。それまでの企業行動と少数株主利益に関する司法判断においては、基本的に株主に有利な判決が出てきた。それがブルドック事件の判決では、少数株主に不利、言い換えれば経営者と特定株主に有利な判決となった。政治も裁判所の判決も、その時の世論を反映したものになりがちである。この事件では、スティールが経営する気がないのに過半数の株式取得を目指すTOBを仕掛けるなど戦術を間違えたために、過剰な世論の反発を招いた結果、一部の関係者の利益だけを守り、日本社会にとって不幸な判断が出てしまった。
Q:アクティビストが企業に求めることは何か?
A:経営の効率を上げること。そこには資本効率も含まれる。アクティビストは配当しろ、自社株買いしろと、企業が蓄積した富を後から来て収奪していくようなイメージで見られる。我々が企業に繰り返し伝えていることは、限られたパイの配分を変えろ、株主にもっと分配しろということではない。経営資源の最適配分を大胆に実現し、事業を行う上での非効率性をなくして収益性を高めて、企業収益の拡大、時価総額の拡大でパイを大きくする努力をしてくれるように働きかけている。パイを大きくできれば、全てのステークホルダーの取り分を大きくすることが可能になる。その上で株主、経営者、従業員、取引先などの配分については、株主をもう少し大事に考えてほしいということ。
Q:今回の米国の金融危機についてどう見ていますか?
A:現在の米国企業の苦境は、金融機関も事業会社も optimization、効率の追求が行き過ぎた結果だと思う。効率を上げるために負債やデリバティブによるレバレッジを高めすぎて適性水準を超えてしまった。日本企業は逆に非効率が残っている部分が多い。この効率性を少し上げることで、株式投資のリターンもまだまだ上げられる。投資機会は豊富にある。米国から見れば日本の企業にはまだまだ収益改善の手段があり、うらやましい。
効率を上げるためには、自社の経営資源をより有効に活用できる他者に委ねるという選択もあるはずだ。日本でもM&Aが増えているが、自社を売ることで収益を拡大、つまりパイを大きくして、ステークホルダーへの配分を大きくすることを考える経営者はほとんどいない。M&Aでは買われる企業の株式にプレミアムがつき、買う側の企業は株価が下がるケースも少なくない。少なくとも短期的には買収されることで株主は利益を得る。経営者は会社を売るという選択も考えるべきだ。
Q:最近の投資行動を見ると、あまり大量に株式を取得するケースもなく、企業に強い注文を付けて対立するケースも無いようで、ソフトな手法に変えているように見えますが?
A:アクティビスト型投資もプロダクト・ライフ・サイクルで言えば、現在はようやく成長期に入ったくらいの段階だ。投資先企業あるいは社会の反発を生まないように配慮しながら、時間をかけて着実に浸透していく段階。そのためにアクティビストの戦術も変えていかないとならない。スティールは企業への提案資料をHPで公開している。当社も投資先経営者に当社の考え方や企業への期待を記した手紙を送るなど、対話をする努力を重ねている。
投資、保有の比率は、以前ほど短期間に大量に保有することは控えるようにしている。大量保有報告書が出ると、どうしても会社側に警戒感が高まる。5%未満に留めておいて、機を見てそれを上回る投資を行う。
まとめ
行き過ぎた効率の追求、事業会社が負債によるレバレッジを効かして短期間でROEを極限まで高める。投資銀行は、あらゆるリスクを証券化商品にし、自らもリスクを取って大量に保有する。市場の効率化が進めば進むほど安易な収益機会は減り、さらなる利益をも求めれば過剰なリスクを取る結果になる。それが米国の金融危機の原因であると新聞の論評がありました。アクティビストは市場・企業の効率化を促進する面はあると考えます。それにより資産運用の改善で国全体への好影響も期待できます。一方で、企業側は長期的な視点に立ち成長と収益確保のために、リスクをコントロールしながら資本の蓄積と投資を繰り返していくことが必要です。このことを投資家にきちんと説明して理解を得ることは経営者の責務です。そのためにしっかりしたガバナンス(役員の選任や報酬制度、経営計画の策定と説明(IR活動)など)の整備が重要ではないでしょうか。
コーヒーブレークのブログ書いています。 http://ameblo.jp/mplstwins/
東京IPOスタッフ CFA協会認定証券アナリスト 深井浩史
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