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テラ株式会社    
(NE
O・2191)    
矢崎社長インタビュー  

第四の癌(がん)治療法である
免疫療法が本格登場


私の年齢になると生命保険でリビングニーズに指定されている成人病で亡くなるひとがちらほらと出てくる。その中でも癌(がん)でなくなる方が多いようだが、まだ年齢も若くできることなら家族のためにももうしばらく生きながらえて欲しいと願う。しかしながらこの癌という病は若ければ若いほど病状の進行が早く手に負えないようである。

その癌に古くて新しい治療法が出てきた。癌の標準治療(手術、抗がん剤、放射線)に第4の治療方法である免疫療法をミックスすることによって癌の進行を止めたり遅らせたりすることが可能になってきたそうだ。この新しい免疫療法を開発したテラ株式会社が3月26日にJASDAQ証券取引所のNEO市場に新規上場した。

テラ社の開発した新しい免疫療法とはどのようなものなのかを矢崎社長を訪問してお話をお伺いしてきた。

事業内容

当社は、がんワクチン療法の一つである「樹状細胞ワクチン療法」を中心とした、がん免疫療法における独自技術を医療機関に提供する会社。

「樹状細胞ワクチン療法」等の研究開発から技術・ノウハウの提供、また再生医療の研究開発を事業の柱としている。主な収益源となっているのが当社独自の治療技術「アイマックスがん治療(免疫最大化がん治療)」の医療機関への提供である。全国10箇所(09年1月末時点)の医療機関に技術提供や権利許諾、またクリーンルームの貸与などを行い、バイオベンチャーでは珍しく創業第4期目の07年12月期に黒字化を達成し、その後は増収増益で成長している。

「アイマックスがん治療」を理解する前に、矢崎社長に免疫療法の世界を紐解いていただいた。
現在“標準治療”といわれるがん治療は「外科療法(手術)」「化学療法(抗がん剤)」「放射線療法」の3つ。しかしこれらの治療を何らかの理由で施せない患者が実は年間68万人もいるという。年に30万人ががんによって死亡するが、その倍以上の数の人々が、“がん難民”として日々溢れているのである。必ずしも末期の患者というわけではなく、副作用や抗がん剤との相性等で治療が進まない患者が多いという。

そこで4つ目の治療方法として注目されるのが免疫療法だ。
30年以上の免疫療法の歴史において様々な治療方法が研究されてきたが、「樹状細胞ワクチン療法」などに代表される最も新しい第4世代の治療は、“特異的免疫療法”と呼ばれ、第3世代の治療から飛躍的に進化しているという。「がん抗原」の発見により、免疫細胞にがんの特徴を覚えさせることで、リンパ球にがんだけを狙って攻撃させることが出来るようになったからである。第3世代までの免疫療法は、体中の免疫を高める再発予防効果としては注目されてきたが、腫瘍に対する直接の反応という点では思ったような成果を得るには至らなかった。しかし近年、特異的免疫療法の研究が進むにつれ、患者の身体的負担を軽減させ、免疫反応が持続する治療法として認知されるようになってきたのである。

この「樹状細胞ワクチン療法」を中心とした免疫療法に化学療法や放射線療法をうまく組み合わせる技術が、当社独自の「アイマックスがん治療」である。本来相性が悪いとされてきた化学療法・放射線療法と免疫療法を、独自技術で組み合わせることにより、より効率的にがんを攻撃する技術を確立した。患者の副作用がほとんどなく、外来でも治療を続けられるという。

当社技術・ノウハウの主力である「樹状細胞ワクチン」とは、樹状細胞という免疫細胞に、がんの抗原(患者のがん細胞をすりつぶしたものや、がん由来のタンパク、それを細かく裁断したペプチドと呼ばれるもの)を取り込ませたもの。患者のがん組織や血液からがんの特徴を突き止めておき、患者のがん細胞や人工のがん物質を、クリーンルームで培養した樹状細胞に認識させたものがワクチンとなる。ツベルクリン反応のような皮内注射で投与すると、“その人の持つがんに対する免疫”が体内で活性化され、記憶されている特徴を持つがんを狙ってリンパ球が攻撃してくれるのである。

当社は7つの抗原に対する独占的実施権を持ち、中でも“WT1ペプチド”というほぼ全てのがんや白血病にオールマイティに免疫反応を発揮する抗原の独占実施権を07年8月に獲得した。また、樹状細胞の培養技術や、クリーンルーム設置・運用のノウハウ、圧倒的な症例数(08年12月末時点:約900例)など、当社の実績が認められ、08年には国立大学病院と提携契約を結び、この技術は益々注目されることとなった。本来国立大学病院が自由診療を導入することは、極めて異例であるからだ。

売上は治療1クール(3〜4ヶ月で、ワクチンを5〜7回投与)ごとにフィーを受け取る仕組み。まだ自由診療であるため、1クールの治療費は150〜200万円ほど。多くて2クール行う患者もいるが、ほとんどが1クールで終了する。どの医療機関も同じ額のノウハウフィーを当社に支払い、クリーンルームの貸与先はそれぞれ施設使用料も加算される。クリーンルームを新規に設置する場合、5千万円程度の設備投資は必要となるが、貸与先への施設使用料も、1クールごとにかかる仕組みなので、設備投資を行っても治療数が増えなければ医療機関に負担はないという。また、セミナーの開催等を通じて、情報発信やマーケティングについてもサポートしている。

患者の身体的な負担は極めて軽いといわれる治療だが、高い効果を発揮した症例も次々に報告されているようだ。樹状細胞ワクチン療法を単独でステージW(末期・他治療無効)の患者に単独で行った場合、約3割でがんが縮んだり進行が止まったりしたという結果が報告された(東大医科研の臨床研究)。また、当社契約医療機関における症例では、化学療法や放射線療法を併用したアイマックスがん治療を行い、評価が可能であった症例に対して約6割に同様の結果が表れたという(第46回癌治療学会総会イブニングセミナーにて報告)。また、すい癌のような難しいがんに対してよい反応が得られたという例もある。

設立経緯

矢崎社長にとって、学生時代に叔父と叔母を立て続けにがんで亡くした経験がひとつの原点であったという。最先端医療にかかわりたい、多くのがん難民を救う為に貢献したいという思いから、外科医としての4年間を経て、日本で設立された遺伝子解析技術を用いる創業間もない創薬系バイオベンチャーへ入社した。

当初は想像すらしていなかったベンチャー企業で働くことで、ビジネスについて経験する貴重な機会を得たという。その後、関連のあった東京大学医科学研究所(医科研)へ客員研究員として招かれ、樹状細胞ワクチン療法の研究と出会う。臨床医師、細胞研究開発、事業経営の3つの経験を経てきたことは、社長にとって今では大きな強みとなっている。

 

04年6月の設立時は研究所教授のサポートを受けつつも1人でのスタートであった。その後、大田副社長との出会いや各分野のがん治療の権威を顧問に迎え、30代中心の経営陣が力を合わせて当社を築いてきた。

社名は、「tera:兆(人体を構成する60兆個の細胞を科学する企業)」、「tell:伝える(情報を発信する企業)」、「terra:地球(グローバルな展開を目指す企業)」の三つの言葉を語源とし、“細胞治療でグローバルな展開を目指す”という矢崎社長の想いが込められている。

今後について

これからも自分が受けたい、家族に受けてもらいたいと思える治療をもっと普及させたい。
契約医療機関数は全国に10箇所だが、症例数増加のために導入先を増やすことを目指す。2010年度は14機関に、12年までに19機関となる計画。クリーンルームを持つ契約医療機関は、様々な細胞治療を普及させるためのインフラとして捉え、次のビジネスチャンスにつなげたいと考えている。

樹状細胞ワクチン療法の質をさらに高めるための細胞培養技術の改善、新しいがん抗原の研究開発も進行中だ。研究成果を実地医療で活用することで、早期の実用化と収益化を図っていくという。細胞治療という点では、再生医療(皮膚の再生等)にも進出していきたい。

がん免疫療法の潜在的な市場規模は、1クール(約3ヵ月)の治療単価を150〜200万円として、がんによる死亡者数が年間30万人以上であることを考慮すると、4500億〜6000億円程度と推測されるが、近年認知度の向上とともに急激に成長してきた。細胞治療はニッチといわれるが、当社はまずここを押さえて体力をつけたいと考えている。また、将来的には新規がん抗原の創薬化等も視野に入れるが、資本の食いつぶしで終わらせるようなビジネスにだけはしないように考えている。また海外展開についても積極的に考えている。WT1ペプチドの独占実施権は、米国・中国でも有効であるため、海外にもビジネスチャンスは多いという。

株主還元

投資家からは事業を成長させることが期待されていると認識しているので、まずは内部保留を充実させ先行投資を行うことで業績を確実に作っていきたい。そのことが当社の株価への評価につながると考えている。配当については投資と見合う十分な内部留保が確保できた段階で考えていきたい。

業績の推移(百万円)

決算期
売上高
経常利益
当期利益
純資産
2006/12
94
-10
-10
83
2007/12
269
63
69
367
2008/12
546
107
59
427
2009/12(予想)
904
151
85

(注)2009年12月期の数字は会社発表業績予想

■西堀編集長の視点

テラ社をバイオベンチャーの範疇に入れるとするならば、それは従来のバイオベンチャーのビジネススタイルには当てはまらない。これまでにIPOしたバイオベンチャー企業はVCや株式市場から調達した資金でもって新薬開発のパイプラインを複数走らせて売上のない経営を行い赤字が続く中で一発逆転のホームランを狙っていた企業が多かった。しかしながらテラ社は創業4期目にはすでに利益を計上するようになり、6期目の今期は上場費用などをこなしながら過去最高の売上と利益を見込んでいる。株式市場では利益が出ているが故に株価のバリュエーションが個人投資家にでもできるようになることでPERが高いとの見方もあってか上場日から株価は公募価格割れとなっているようだ。

今後の事業展開を考える上で契約機関数がキモになってくると見ている。NEO市場には必須のマイルストン開示において、契約機関数は2011年12月期には19カ所になると発表している。矢崎社長に潜在的な契約機関になりそうな医療機関数について質問したところ、規模や設備などの観点から各都道府県に複数展開できる可能性もあるとのことである。一方、当社の技術・ノウハウは医療機関において患者に対して活用されるものであることから、耐久消費財を拡販するような調子での普及は考えない方がいいはずだ。

最後に当社の株価形成については免疫療法のお世話になった患者さんの声が大きく影響してくるものと考えられる。従って、癌治療において着実に確実に実績を積み上げていくことで患者さんから支援される形で事業が伸びていくことを期待したい。


 企業DATA    テラ株式会社
□証券コード 2191・NEO株価情報へ
□ホームページ http://www.tella.jp/
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