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今年のIPOは7月までに25社と過去10年間で最低の件数となった。4月、5月、6月、7月と連続でIPOが1件となり、メディアでもIPOに関連する報道はめっきり影が薄くなった。そのような環境の中で日経ヴェリタスだけがIPOに関する記事を書いてくれているが、私のマンスリーレポート同様に記事の内容にはご苦労されている様子を窺い知ることができる。
 
先月のレポートではIPO株が投資家から見放された背景について私見を述べたが、今まさに3月決算企業は第一四半期決算の発表時期を迎えている。季節的な売上変動がある企業はさておき第一四半期の数字を見れば通期の業績予想が達成できるかどうかはある程度はわかるはずである。
 
上場間もない企業が上場時に開示した業績予想や上場後1年目の業績予想を外して着地する確率が相当高く、なおかつ下方に修正されると業績予想ベースのバリュエーションがその瞬間に割高になり株価が大きく下落して大損を被った経験を持つ投資家が多いだろう。
 
ではなぜこのように業績の大幅な下方修正が起こるのか。たぶん新興株式市場に上場する企業には「成長」という2文字が大きく圧し掛かっているからではないだろうか。主幹事証券会社、上場取引所ともに上場申請してくる企業に対する審査の過程で将来の成長がなければIPOできないと思わせる節がある。また企業サイドも業績の成長こそが株価形成の大きな要素となりうると考えている。 
 
しかしながら金融商品取引法の施行で今の上場企業に求められていることは、成長よりも内部統制やタイムリーディスクロージャーであったりする。形式を整えるために経営資源や時間を法的対抗要件の整備に使わねばならないという本末転倒の動きを強いられているのが新興市場に上場する企業の本音ではないだろうか。
 
内部統制の充実と四半期決算対応のコストを金額にすると新興市場に上場する企業であっても数千万の負担増になっている。上場時の経常利益額が1億円〜2億円規模だとその影響は20〜30%の減益要素となってくるのである。従って営業的に増益であっても諸々のコスト増の結果増収減益となる企業も出てくるはずだ。
 
このように上場した後にルール変更があって苦戦を強いられているというのが2000年以降に新興株式市場に上場した企業の多くがおかれている立場であろう。
 
さてIPO株の株価動向であるが、新興3市場の売買金額が伸び悩む中にあってセカンダリー市場での株価動向は非常に厳しい。
 
2007年の上場企業数は121社であったが、7月末現在では1社上場廃止となり120社が上場している。その120社の平均初値騰落率は49.6%であったが、7月末の株価の公募価格からの騰落率は平均▲30.6%となっている。株価が初値の水準から半値以下になっている銘柄のほうが多いということである。因みに120銘柄の中で公募価格を維持しているのは17銘柄のみとなっている。
 
同様に2008年の上場企業を見ていくと、7月末までのIPO企業数は25社で平均初値騰落率は35.1%であった。その25銘柄の7月末株価の公募価格からの騰落率の平均は21.6%とわずかながら初値の水準よりは低くなっているが、2007年の銘柄に比べるとまだまだ高い株価水準にあるといえる。
 
ところがこのマンスリーレポートを書いている8月に入ってからの数日間にIPOした3社の初値はいずれも公募価格割れとなった。 IPOの件数が多くて需給悪化が起こったわけではなく、株式市場の地合いの悪さをそのまま反映した価格形成となっている。
 
年内は毎月一桁のIPO件数が予想され、需給による値崩れは起こることはないと考えられるが、新興株式市場への資金流入は期待できないため『買い手不足』の状況がしばらくは続きそうである。 
 
しかしながら長期の時間軸で株式投資を考える人にとってはまたとないバリュー株がIPO銘柄から出現しそうである。

2008年7月
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証券会社の国際部と海外現地法人に10年勤務。気象情報会社ウェザーニューズの財務部長、米国E-Commerce会社日本法人のCFO&COOを歴任後、2000年IRコンサルティング会社フィナンテックに入社。同社取締役。
日本テクニカルアナリスト協会検定会員。

著書に『No.1情報サイト 東京IPO編集長が教える!IPO株の本当の儲け方』(ソフトバンク クリエイティブ出版)新聞、マネー誌、TV出演他、講演多数。

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