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東京IPOトップインタビュー:(株)ピアラ(7044・東マザ)

株式会社ピアラ(2018年12月11日上場/東証マザーズ:7044)

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ピアラ


化粧品と健康食品に特化した通信販売企業のマーケティング支援を展開する株式会社ピアラは、投資対効果の最大化を徹底することでクライアントとのWIN-WIN関係を創出する。AIを駆使した成果報酬型で事業成長を実現する秘訣は、ピアラならではの「人らしさ」を活かす手法にある。過去のデータから“売れるパターン”の要素をAIに学習させ、クライアントの商品の広告戦略に落とし込む。同社の強みはAIから得られたデータを、あくまでも“提案”と位置づけ、最終的な判断は同社のコンサルタントが行う点が挙げられる。この仕組みが短期間でヒットを生み出す。


飛鳥顔写真


↑代表取締役CEO 飛鳥 貴雄


<社長の素顔 代表取締役CEO 飛鳥 貴雄>


かつて有名メーカーの下着のカタログが200円でコンビニ販売されていた時代がある。その仕掛け人がピアラを創業した飛鳥さんだ。その実績をもとに同社を起業。資本金100万円で、紙媒体のカタログにチラシを同封するビジネスモデルでスタートした。その後、広告代理店ありきの収益体制からデジタル雑誌やECなど自社で通信販売の広告モデルを育ててきた。同社のノウハウもアナログからAIへと進化を遂げた。
同社は経歴よりもWIN―WINの理念と自責の念がある当事者意識を持った人材を採用する。情報感度が高く、新しいテクノロジーを楽しいと思えることも大事だが「1回くらい挫折したことがあるくらいの人がいい」と飛鳥さんは言う。業界の常識を覆す「成果報酬型」で事業を推進するなか、民泊サービスの先駆けとなった「Airbnb」のブライアン・チェスキーCEOが言った「最初は無視され笑われて、競合と認められた時には自分が勝っている」という言葉に共感。「勝つまでやれば必ず勝つ」という信念で新風を吹き込む。






ピアラは、「いかなるビジネスにも人が介在する」ことに視点を合わせ、投資対効果の最大化にAIを活用する。クライアントが1年で販売する予定数量を3ヶ月で完売するなど、ヒットを生み出す成果報酬型のマーケティングの技術について同社CEOの飛鳥貴雄さんに話を伺った。


AIが人の悩みを学習、コンサルティングに活かす


ピアラは化粧品と食品領域に特化したマーケティングを展開する。通信販売のコンサルティングをはじめ、AIなどによる独自の技術で顧客獲得から顧客育成に至るまでKPIを保証する。KPIにはクライアントの課題や予算、売上などの指標を設け、「定期購入への入会」、「休眠顧客による再度購入」など具体的な成果を設定する。その成果が同社の収益となる。


現在、同社が自社開発したシステムは3つある。“しみ”や“しわ”など人の悩みでタグ付けするほか、ヒットした条件をリアルタイムに取り込み、顧客の商品一つひとつに最適化したマーケティングを提案するデータ管理の「RESULT MASTER」、SNS連動や話題のAmazon Pay等にも対応した、オンラインショッピングのカートシステム「RESULT EC」、ウェブ広告などによるアフィリエイト「RESULT PLUS」を提供する。


2018年9月には全国約20,000局ある郵便局の広告指定代理店となり、局内での対面販売を開始。通信販売業者に喜ばれるメニューとなった。


同社には、これまでにマーケティング支援を提供した600社以上のデータとヒットを生み出すノウハウがある。これを基に最適なプロモーション方法や広告を出す媒体などを選定。確実にターゲットとなる消費者にリーチする。


同社は、1つの商品だけではなく類似品含め複数の商品をAIに学ばせる。過去のデータをAIが分析して広告提案につなげる。その過程で「人による判断」が入り、データをリアルタイムでチューニングするため、精度の高い予測を立てることができる。これが成功率を高める秘訣となっている。


クライアントの新規顧客の獲得や、購買に向けた顧客の囲い込みなどを通じ、データがさらに蓄積され、より的確な広告展開が行える。広告の精度が高まる分、より広く深く消費者にリーチができる。こうして、クライアントとのWIN-WINを創造し、双方の利益拡大と継続成長を実現する。成果報酬型であるため「とりあえずやってみる」というクライアントも多く、同社が扱う膨大なデータと予測の精度が競合の参入障壁になっていると考えられる。


美容と食品のEC市場は伸長傾向にあるほか、増加傾向にあるシニア人口向けの商材が多いことからも将来性が見込める。また、日本から海外へ販売する「越境EC」も増えており、中国やタイなどアジア地域への展開も見据える。


グローバルの体制については、2008年から独自の技術を構築すると同時に、エンジニア不足を想定し、タイでオフショア開発をするピアテック、沖縄にはシステム開発をするピアラボを開設した。アジアへの進出の機運が高まった2013年、中国に拠点を構えた。


WIN-WINを生み出せるビジネスモデルにこだわった


「WIN-WINの基本は相手が最初に勝つこと」と強調する飛鳥さんは「信頼を高めながら今日までやってきました。WIN-WINは対クライアントとの関係と思われがちですが、組織内であったり、経営者と従業員であったり、公私にも存在します」と話す。飛鳥さんがWIN-WINを同社に根付かせた背景に大手企業での経験がある。クライアントはWINなのに、肝心の社内では部門間で不利益や不要な弊害が生じることがあったそうだ。また、起業してからは、代理店との関係からも学びを得た。代理店とのビジネスで成長を遂げた同社だが、代理店がビジネスを失えば、それに引きずられる構図でもあった。これを乗り越え、自社に安定した成長基盤を構築し、同社のWIN-WINのあり方につなげた。


IT技術の発展によりマーケティング手法も多様化が進む。そんな中でも、同社の視点は変わらない。「買い物には必ず人が絡みます。購入の判断をするのは人ですから、マーケティングがシステム的に最適化さえできればいいというわけにはいきません」と飛鳥さん。「サービスに人らしさを出して深くおもてなしをする。一つの製品に深く向き合い買っていただくモデルは必ず長く続く。一人ひとりが人としての体験を忘れることのないマーケティングを提供していきたい」と話す。


客数と客単価が成長性の指標に


今後は、KPI保証で新規クライアントの獲得に注力して全体の客数と客単価を伸ばしながら、維持・継続クライアントの割合を高めていきたいという同社。蓄積する膨大なデータを活用した商品企画開発という新しいビジネスモデルも検討する。「どういう商品が、消費者のどのような悩みに対し、どういう価格帯で売れている」という情報があるため、“口臭”や“育毛”など悩みの分野ごとに今のトレンドを把握しやすい。発売予定の商品に対する市場ニーズの分析もできる。過去にヒットした商品はそれぞれに費やした広告コストや仕掛けは異なっており、このノウハウが、どうすれば新商品が売れやすいかを検討するのに役立っている。こうした強みが評価され、メーカーと優れた素材を持つOEM会社をマッチングさせて新商品企画を手がけるなど、クライアントへの事業計画立案サポートも今後は需要が高まりそうだ。


「サービスに保証書がついているように、最近は人材の業界も全て成果報酬です。シェアリングエコノミーというトレンドが出てきていますけれども、成果や効果があるものに対価を払う傾向が顕著になってきている。その潮流がマーケティング業界にも訪れている」と飛鳥さんは見ており、「きめ細かにデータ検証を重ねながら、小さく仕掛けて大きく摘み取っていきます」と意気込む。


(掲載日 2019年1月10日)


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