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コーヒーブレイク 〜 原弘産と日本ハウズイングの買収攻防戦 〜
東京IPOスタッフ CFA協会認定証券アナリスト 深井浩史
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先日、東京大手町にて、褐エ弘産(大証2部8894)による日本ハウズイング株式会社(東証2部4781)の株主向説明会が開催されました。原弘産(の100%子会社)がハウズイングの定時株主総会に提出した株主提案議案の委任状勧誘のための説明会でした。私もこれに参加してきました。

原弘産はマンション分譲、所有者の転勤などで賃貸に出されるマンション居室の賃貸管理、中古マンション販売仲介、風力発電システムの製造などを行っています。そして同社はハウズイングの株式16.22%を保有する大株主です。これまでマンション管理業界大手のハウズイングとの事業提携・事業統合を求め、同社経営陣との協議を求めてきましたが進展がありませんでした。そこで今年2月に提携を推進するために同社との資本関係強化を目指して、公開買い付けを行うことを発表しました。ただしこの公開買い付けは、ハウズイングが買収防衛策を導入済みであるため、同社株主総会で株主が「防衛策を発動しない」と決議することを条件に、7月に実施することとしています。これを受けたハウズイングの取締役会は、TOBとそれに続く事業統合には反対の姿勢を表明しました。そして6月末の定時株主総会に、原弘産の買い増しに対する防衛策発動の権限を取締役会に委任することを求める議案を提出しています。一方、原弘産は対抗して買収防衛策発動を認めない株主提案を提出、ハウズイング株主に対して委任状提出を依頼するため、株主向けの説明会を開催しました。

当日の説明会には17名の株主が参加したそうです(原弘産経営企画室)。それに加えてメディアや証券関係者も参加していたようで、合計は30名ほどでした。原弘産は株主向の委任状勧誘活動をするにあたり株主名簿の閲覧を要求したものの、ハウズイングは会社法の株主権行使の例外規定を盾にこれを拒絶。原弘産は閲覧を認めるよう東京地裁に仮処分申請をしたものの却下されました。東京高裁に抗告していますが、まだ認める決定は出ていません。結局株主総会が近づく中、株主名簿を閲覧して直接働きかけることができない状況で、プレスリリース等による告知で株主向説明会を開催しました。当日の朝の新聞では、ハウズイングの創業家が原弘産の提案に賛成することが報じられました。また説明会にはテレビカメラが入り報道されたようで、総会に向けてハウズイング株主の関心も高まっていくものと思います。

その説明会の中身ですが、原弘産の原社長が事業提携の狙いを丁寧に、熱く説明していました。具体的な数値も示し、わかりやすい説明で、統合にかける意気込みや統合後の両社の企業価値向上に期待を抱かせる内容でした。もちろん説明会で語られていない部分もあり、簡単には事業統合が機能しない面もあるかもしれません。反対するハウズイング経営陣の意見にもそれなりの理屈はあると思います。いずれにせよ真剣にハウズイング株式への投資判断を考えている株主であれば、原弘産側の説明も聞いてみる価値はあると思います。

原弘産は、TOB価格を1株1000円としています。TOB成立の下限株数は50.01%(過半数)、最大で買い付ける株数は66.67%(2/3未満)としています。ただし、「原弘産に賛同して『防衛策は発動させない』が、ハウズイングの株式は引き続き保有したい。」と希望する株主の保有割合は、上限値(66.67%)および下限値(50.01%)から差し引くことを条件にしています。また、TOBが成功して親子関係となってもハウズイングの上場は維持していくとしています。ハウズイングの株価はTOB発表直前には680円程度、これがTOB価格1000円の発表とハウズイングによる自社株買い(1株789円)を受けて一時1000円を超えたものの、その後900円台で推移しています。原弘産の株価はTOB公表を受けて上昇したものの、不動産業界の環境悪化の影響で4月に平成20年2月期業績を大幅下方修正し、株価はTOB発表前の水準近くになっています。総会の結果次第でTOBと事業統合が不成立となれば、株価は一時的にせよ現状から下がりそうな予感がします。それだけにハウズイングの株主としては、まずは総会で原弘産の株主提案に賛成してTOBに応じて売却できるようにするか、あるいは総会前に市場で売却するか、などの選択を考えることになりそうです。

不成立後に予想される反動や最近の株価動向を考えると、TOBが実施されて1000円で売却できれば、短期的にはもっとも良い結果となるように見えます。それだけに原弘産がTOBの買い付け株数の上限を66.67%未満としている点にはやや疑問を感じます。それ以上は買わず、上場も維持するということで、ハウズイング側の経営者や大株主に配慮した面はあるかもしれません。しかし少数株主の利益を重視するという観点からは、希望があれば上限を設けずに全応募株を買い取ることが望ましいと思います。またTOBが実現すれば親子上場となる関係にも改善の余地があるかもしれません。むしろ全株式を取得して、完全子会社化を目指す方がすっきりするのではないでしょうか。

いずれにせよ27日の株主総会の結果には注目。その前に6月14日(土)にも第2回の株主向説明会があります(大手町サンケイプラザにて14時から)。ハウズイングの株主の方はぜひ原社長のお話を聞いた上で、総会の議決権を行使して、この買収攻防戦にアクティブに参加してみてはいかがでしょうか。

*原弘産は、今回の「事業提携・事業統合」の提案およびTOB提案を専用のwebサイトで公開しています。 http://www.harakosan.co.jp/ir/teian/index.html

 


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東京IPOスタッフ CFA協会認定証券アナリスト 深井浩史

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