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2020年上半期 IPOレポート!

図1


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 「新型コロナウイルス」。この言葉を目にしない日がないほど、今年の上半期はまさに新型コロナウイルス感染症一色の世界でした。年始より同ウイルスの感染が拡大し、3月以降の海外主要地域でのロックダウンの影響を受け、経済停滞の懸念や原油価格の急落もあり、株式市場は大きな下落となりました。当然景気に敏感なIPOも大きな影響を受けています。様々な意味で歴史的なシーズンとなった2020年上半期のIPOを振り返ります。

図2


■上場社数は微減、公募割れは最多、騰落率は最低から最高水準へ

図3

先ずは全体の総括から。今年の上半期上場社数は全34社でした。第1四半期は3月の怒涛の上場ラッシュで上場社数は27社となり、リーマン・ショック以降2017年と並び最多社数でした。本来第1四半期は全31社が上場予定であり、記録更新の期待もありましたが、新型コロナウイルスの影響による市場急落、4月の国内緊急事態宣言により状況が一変。3月と4月に上場を予定していた企業のうち、実に18社もの企業が承認を取消しました。18社という承認取消し数はリーマン・ショック以降で断トツの最多数であり(昨年は2社)、2001年の米同時多発テロ時の過去最多記録20社に迫る勢いと考えると、どれだけ異常事態だったのかがわかります。しかし、その後の緊急事態宣言の解除や市場の回復に伴い、IPOも徐々に回復、結果的に第2四半期の上場社数は前年比-10社の7社で、上半期合計34社となりました。仮に承認を取消した企業が全て上場していれば、上半期の上場社数は49社と、リーマン・ショック以降で過去最多数となっていました。

平均初値騰落率は前年の80.7%から11.1pt減の+69.6%となりました。これも新型コロナウイルスの影響が大きく、2月末まで順調だった初値も3月より急落し、公募割れが頻発。上半期の合計公募割れ社数は全18社と、残念ながら2000年以降過去最多の公募割れとなってしまいました。

図4

上の図は昨年から今年3月末までのIPO企業の初値騰落率5銘柄平均です。3月を境に急激に落ち込んだのが一目でわかります。第1四半期の初値騰落率平均は+15.1%と、2000年以降四半期比で過去最低レベルに達しました。しかしご存じのとおり5月頃より株式市場は急回復し、6月以降の銘柄では一転、フィーチャの806%という大記録を筆頭に驚異的な初値が連続。第2四半期(4-6月)の初値騰落率平均は+280%となりました。社数が少ないこともありますが、これは2000年以降の同四半期で過去最高値です。まさに過去最低水準から最高水準へ、怒涛の展開を見せてくれました。

資金吸収額については平均で約20億円と、前年より-25%の6億円の減少でした。合計額では-33%の336億円の減少でした。上場時時価総額のTOPはカーブスホールディングスの567億円。18年はメルカリとラクスル、昨年はSansanと時価総額1,000億円超の大型案件がいくつかありましたが、今年は話題の大型銘柄はほぼなく、小粒化の傾向は加速しているようです。ここからは分野別にみてみましょう。

 

■業種がやや多角化。古豪企業の参戦も目立つ

■市場別上場社数

図5

市場別ではご覧の結果となりました。マザーズが22社と偏重の傾向は変わりませんが、若干ジャスダックスタンダードの上場も多くなっています。初値騰落率もマザーズ優位は変わらずでした。

■業種別

図6

業種別ではサービス業、情報・情報通信業が大半の構造は変わりませんでしたが、業種の数はこの数年より多い全11業種から上場がありました。この影響もあってか、今年は情報・通信業の割合が過去5年で最低となっています。今年はヴィス、ドラフト、グッドパッチと、対象領域は違えど、デザインを主業とする企業の上場が目につきました。既に基幹の・情報・通信からエンドユーザー向けのサービスへと、風向きが変わっているのかもしれません。

■地域別

図7

地域別は東京のシェアが約75%と、例年にも増して東京偏重となっています。それ以上に目立ったのは大阪の上場社数。この上半期は大阪から7社が上場していますが、既に上半期時点で、リーマン・ショック以降の大阪からの年間上場社数が過去最高となっています。大阪から上場した7社の設立から上場までの平均年数は39年と、地方の古豪企業の上場が多くなっているのかもしれません。ただ、もしこれが当初のオリンピックを意識して上場を目指していたのだとしたら、下半期、古豪企業の上場は少なくなるかもしれません。

■主幹事別図8

主幹事別の実績はご覧のとおりです。幹事社数では野村證券とみずほ証券がトップタイの8社。資金吸収額では野村證券、平均騰落率では大和証券がトップでした。ちなみに、取消しとなった18社のうち、およそ半数の9社が野村證券主幹事でした。

■監査法人別

図9


最後に監査法人別です。Big4が大半を占める構図には変わりませんが、若干シェアは低下、例年はあまり目にしない監査法人の名前も挙がってきています。

■上場取消し企業

・・・3月以降に承認を取消した企業はご覧のとおりです。2000年以降過去最多の取消しは残念ですが、7月末時点で、ロコガイド、コパ・コーポレーション、コマースOneホールディングス、GMOフィナンシャルゲート、Speee、アイキューブドシステムズ、の6社が再承認・上場を果たしています。下半期に向けて、この中から再承認があるかもしれません。

図10

次に上半期のIPOの各種ランキングをおさらいです。

 

IPOランキング、初値上昇率TOPは圧倒的フィーチャ

■上場時(初値時)時価総額ランキング

図11

時価総額TOPはカーブスホールディングスでした。コロナウイルスの影響を一身に受け初値は低くなりましたが、もともと公開規模が大きかったため、首位となりました。ロコガイドやコマースOneホールディングスなど、3月の取消しから再承認となった企業もランクイン。6月以降の市場の急回復により、高い初値が付いたことも要因でしょう。

■資金吸収額*ランキング

図12

資金吸収額TOPはカーブスと同じく東証1部上場となった大型案件、フォーラムエンジニアリングでした。ロコガイドは公募一択、きずなホールディングスはほぼ売出し一択と対照的だったのが印象的です。
*資金吸収額=(公募株数+売出株数+オーバーアロットメント)×公開価格、にて算出

■初値騰落率ランキング

図13

初値騰落率TOPはAIを活用した車載カメラ等の画像ソフトを扱うフィーチャ、上昇率+806%の圧倒的な数字でした。実に公募価格の9倍超、18年に初値テンバガーを達成したHEROZに次ぎ、2000年以降歴代2位の上昇率でした。TOP5は全て株式市場が急回復した6月に上場した企業であり、高騰ぶりがうかがえます。

■初値VS現在株価ランキング図14

初値をつけた後の市場の評価はどうなったのか?ということで各社の初値と7/21時点の終値で比較した際の上昇率TOP10です。発射台が低い分、3月の大荒れ市場で低い初値をつけた先が上位に来ていますね。それでもNexTone、松屋アールアンドディの伸びは驚異的です。関通、サイバーセキュリティクラウド、ロコガイドなど、高い初値をつけた以降も株価が伸びている先も今後要注目です。

 

■昨年のIPO企業は今、、、TOPはユーピーアール

上場から最低半年が経過した昨年のIPO企業群。今最も市場に評価されている企業はどこなのか?上記同様、各社の初値と7/21時点の終値で比較した際の上昇率TOP10です。

図15

TOPはユーピーアール。同社は昨年からずっと上昇率でTOP水準をキープしており、本当に強いです。注目はECのBASE。初値こそ苦戦を強いられたものの、この5月頃から急伸し、颯爽と2位に浮上してきました。ピー・ビーシステムズは福岡Q-Board上場ながら大健闘中。テレワークのサービス開始や社長が前面にたつIR等で話題を集め、急伸しています。全体的にみると、SaaS系やプラットフォーマー系などのネットサービス企業や、オンライン診療のメドレーや、EC系発展を見越した物流系等、新型コロナウイルスに強い銘柄群が評価されている印象です。

 

■終わりに:過熱感はどこまで続くのか

以上、簡単ですが上半期のIPOを振り返りました。一時は新型コロナウイルスの影響でどうなることかと危ぶまれたIPO市場ですが、現状は例年とそん色ない上場ペースへと回復しただけでなく、初値については少し異常とも思える高値が続く過熱ぶりを見せています。この過熱感、まさに現在のマザーズ指数が同水準であるように、18年半ばのHEROZあたりの時期が思い起こされます。7月以降も順調に上場が続き、高い初値も続いていますが、どこかで一服となるのだと思います。そうした際、思い起こされるのは昨年8月に上場したステムリムです。昨年は規模の大きかったこの創薬ベンチャーの公募割れを境に、以降の9・10月のIPOは初値において苦しい状況が続きました(結局、年末に急回復するのですが。)。くしくも今年も8月に創薬バイオベンチャーであるモダリスが上場を控えています。しっかりと黒字状態にしての上場であり、状況も異なるので、公募割れということもないでしょうが、熱しやすく冷めやすいバイオ銘柄の登場は、1つの注目ポイントとなるかもしれません。

日本ももう少しで梅雨明けです。IPO関係者、投資家の皆さんにおいては、このお祭りムードをうまく生かしつつ、迫りくる真夏のようなこの熱気でバテてしまわぬよう、冷静な目も併せ持ち、下半期に臨んで頂ければと思います。

2020年7月22日 発行


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