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東京IPOコラム:Vol.176「混乱の源は日米のカリスマ投資家」

Vol.176「混乱の源は日米のカリスマ投資家


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早くも桜の花が散り春爛漫の季節。お花見気分による気の緩みか大阪を中心に地方でのコロナ変異種の感染拡大が気になる昨今です。その後の株式相場は3月決算企業の配当落ち前後で金融市場におけるある出来事を背景にやや気迷い商状ながら基調としての上昇トレンドを堅持しています。カリスマファンドマネージャー率いる米国のヘッジファンド会社、アルケゴスキャピタルマネジメントの運用による巨額損失が世界中の金融業界にもたらされ第2のリーマンショックとなるのではとの懸念を指摘する声もあり、今後の行方を見守る必要が出てきました。今後米国ではSECによるヘッジファンドに対する規制強化や一部のウォール街で活躍するカリスマ投資家に対抗する個人投資家への潮流が活発化するとの観測も出ています。


米国のカリスマ投資家が引き起こした問題以外にも日本でも有名なカリスマ個人投資家が昨年の8月にIPOした創薬ベンチャー、モダリス(4883)の株式をめぐってロックアップ期間があるにも関わらず第三者割当増資で引き受けた60万株の株式を上場後のロックアップ期間前に比較的高値で売却していたとの話題はこのところやや需給悪化が見られるIPO市場に少なからぬ影響をもたらしたと思われます。IPOに先立って企業は一定株式をベンチャーキャピタルや取引先企業、個人のエンジェルなどに割当ますが、その株について上場後6か月間は売却できないという、いわゆるロックアップという決まりがあり、今回このカリスマ投資家は、この決まりを知らずに売却したとの話です。こうした出来事など起きる筈はないと思っていても現実に起きてしまいましたので、今後のIPO企業も他山の石としてしっかりと管理して頂く必要があります。また証券会社もこうした事態を避ける意味で何らかのシステムを構築しておく必要がありそうです。とんだ迷惑を被ったのはモダリス社及びその株主です。同社株は上場後の高値から期待に反して下落トレンドが続いています。海外企業の評価と同様のビジネスを行っている日本企業との評価の違い。理由はともあれ軽率なカリスマ投資家の売却話はこうした評価の差に拍車をかけてしまいそうです。


こうした国内外での出来事もあってか、16日から始まった13銘柄のIPOについては一応順調な初値形成がみられるものの初値形成後は押し並べてやや頭重い展開が続いているとの印象です。その中で人気化しているのが前回の本コラムで取り上げた半導体検査装置の開発・製造、LSI設計会社、シキノハイテック(6614・JQ)。公開価格390円に対して初値は3.1倍の1221円。上場初日に一旦は1050円の安値まで売られましたが、そこから短期で更に2倍以上にまで急騰し半導体レーザー企業、QDレーザ(6613・M)の後を追う格好で人気を集めています。これらはいずれも半導体に絡んだモノ作り系のハイテク銘柄であり、今後のIPOでもこの潮流が続く可能性がありそうです。


(東京IPOコラムニスト 松尾範久)