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東京IPO特別コラム:「沖縄返還50周年:間違いだらけの沖縄虚像-2」

〜語られないものを視る眼〜


沖縄返還50周年:在日米軍について考える


 

前回*と引き続き沖縄復帰50周年に寄せて、在日米軍について考えてみたいと思います。

沖縄の過剰な米軍集中率

1950年代初頭、沖縄の全国における米軍集中率はわずか10%程度でした。それが今日では約70%です。なぜでしょう?戦後直後むやみに軍事施設、飛行場、港湾、名家(米軍将校の仮住まい用)等を全国で接収した後、やがて日本政府が成立し、少しずつ返還交渉をした結果です。沖縄返還が見えてきた70年代初頭から、関東の場合周辺の基地を横田基地に集約し、その代わり騒音の主原因である戦闘機群を沖縄の嘉手納基地に移転させた経緯もあります。

 

そして、1972年の沖縄返還時に、日本政府が同様の努力をしてくれるだろうと沖縄が期待しても無理からぬことであり、間違いでもありません。前回紹介しました通り、海兵隊の基地が倉庫、飛行場、兵舎と分かれていますが、このように分かれていなければならない理由はありません。一つの基地に縮小し、集約しても全然おかしくありません。やはり日本政府の努力が足りていないと思われても仕方がないことと思います。

 

1995年の沖縄少女暴行事件をきっかけに、嘉手納以南の基地縮小が真剣に検討された結果として生まれた普天間飛行場の辺野古への移転が行われれば、兵舎と飛行場の機能は一つに集約する形にはなります。しかし、海兵隊に本来必要ない滑走路を2本(一応陸地への騒音を減らす工夫といいますが)も海に突き出る形で建設するのですが、しかも兵舎群が海岸から奥にある台地の上にあるので、建物2階分もの土を盛って平地にしてからでないと滑走路が建設できないという、バブルの匂いがする計画です。

 

しかし、当初設計から誤算が発覚し、細かい計画変更への県知事承認は得られる見込みは少なくとも現知事の任期中(次期知事選は今年9月)はありません。その間、海兵隊は代替地の辺野古に飛行場ができるまでは絶対動かないという姿勢を崩さず、日本政府は物事が動かないのは県が承認しないから、自らはもう動く意思はないというスタンスで、完全に責任放棄状態です。

 

米軍は、飛行機は落ちるもの、10年に1度くらいならいい方だといいます。2012年沖縄配備で大騒ぎになったオスプレイ(ヘリコプター、飛行機のように離着陸できる輸送機)もその10年目に突入です。統計上いつ落ちてもおかしくないということになります。今まで運がよかったということでもありますが、不幸にして墜落事故により死傷者がでてしまった場合、これだけ三者間の関係が冷えており、かつ配備前に県民の猛反発の中導入した代物ですから、政治家は冷静な会話もできないでしょう。普天間飛行場の撤退要求に留まればいいですが、嘉手納基地にも飛び火すれば、事態はかなり深刻です。飛び火がなくとも、市民運動が非暴力のままでいるか保証はありません。辺野古の埋め立て工事は事実上棚上げになることも覚悟しなければなりません。

 

加えて、バイデン政権は中国を刺激するかのように、来日中台湾有事の際の米軍関与を明言しています。(もちろん、実現を伴うかは別ですが)しかし、足元で米軍の撤退要求が在日米軍の7割を抱える地元住民から噴出してもおかしくないのであれば、従来の路線を越えた強気発言がどれほどの重みをもつのでしょう?こうしたリスク管理の観点が、海兵隊も日本政府に欠落しています。

 

意図した重みを持たせたいなら、脇の甘さは可能な限り最小限にすべきでしょうし、1945年から変わらない在日米軍編成が今日に適したものなのか、再検討した方がよいでしょう。前者に関していえば、例えば新居(辺野古)ができるまで、海兵隊を分散させて国内外で仮住まいを探す、太平洋エリアでのローテーション配備から沖縄を外す、他に目に見える縮小を行う等暫定措置を検討した方がいいように思います。

 

一応分散という方向では、在沖海兵隊の約2割相当の4000人前後がグアムに移転することになっています。(移転先のキャンプ・ブラッツは2023年初頭に稼働予定)しかし、移転人数の主眼が司令部とあり、最も騒音や事件を起こさない部類の人々ですから、住民から目に見える「負担軽減」となるかは疑問です。

 

なお、分散やローテーションという考え方が、ますます重要になっています。なぜなら、一か所に固まっているよりも、複数個所に居場所を分散し、かつこれらの居場所に常駐するのではなく、ローテーションで巡回し、どこに戦力があるかを分かりにくくすることにより、不意打ちに遭っても戦力温存の可能性を高める戦術です。従来よりも中国のミサイル精度は向上していますので、的確に軍事施設を狙い撃ちできるようになってきています。よって逆に集中していると、そこだけ不意打ちで攻撃すれば、戦力が一気に失われますので、沖縄にこれだけ米軍基地が集中することは今日にそぐわなくなってきています。(不意の同時多発攻撃に対しミサイル防衛システムが何発感知し、海上で撃ち落とせるかは、正直未知数だと思います)

 

理想な在日米軍の構成とは

日本という島国への攻略(有事)を考える場合、中長距離から軍事・通信施設を破壊し、かなりの程度反撃力を奪ってから、大量の艦船で上陸し、陸上戦を展開することになります。

加えて沖縄に米軍は集中しているのですから、沖縄や九州、中国地方にある米軍基地、自衛隊基地を真っ先に攻撃してしまえば、本質が陸軍である海兵隊は即応できず、遠くの海軍が到着するまで無力化しているので、沖縄上陸を急ぐ必要はありません。一方、空軍や海軍は動ける状態であれば、緊急発進し反撃に転じることができます。

 

次に、中国と尖閣諸島でもめていますが、例え海兵隊が上陸しても、中国が空から攻撃すれば、小さい島なので逃げ場は当然なく、討ち死するだけなので、上陸自体に意味がありません。(以前尖閣諸島問題で盛り上がっていた頃、尖閣諸島に上陸しようとしたことが発覚し、罷免された愚かな在沖海兵隊の顧問がいましたね。)一方、尖閣諸島を巡る戦いがあるとすれば、海軍と空軍が、制海・空権を巡って戦うことになります。

 

そして、話題の台湾有事でも、台湾も日本と同じ島国であり、攻略方法は同じですから、陸軍の出番は上陸後です。しかし、その前に上陸を阻止すべく海戦が先にあります。そして、今時の海戦は空軍・海軍力のセットで戦うことになります。(中国の大量物資にどこまで戦えるかが大きな課題ですが)

 

ただ、中国がウクライナ侵攻におけるロシアのように「人道的回廊」を認めるか不明ですが、そうであれば台湾政府要人や民間人救出支援が必要になります。非戦闘任務という位置づけで海上自衛隊の仕事ですが、海兵隊とセットで動ければ、より有意義でしょう。(但し、有事になる前に海上自衛隊の船隊は石垣島中心に配備するでしょうから、沖縄本島まで戻る手間がかかりますし、事前にどういう協力体制を組むかは決めておかないといけませんが。)

 

なお、朝鮮半島有事の場合、矢面に立つのは在韓米軍ですが、北朝鮮軍の南下と同時に在韓米軍の後方支援部隊がいる日本の軍事施設にも攻撃する可能性はあります。(現在でも朝鮮戦争を戦った国連軍後方司令部が横田基地にあります)現在の憲法では、自衛隊は日本の国土を専守防衛するため、ミサイル防衛システム等で日本を守り、攻撃被害の最小化に奔走する間に、米軍が北朝鮮の攻撃拠点を破壊し、日本への攻撃を止める段取りとなっています。

 

この場合でも初動で求められるのは、(岩国基地を中心とした)空軍力であり、次に物資・人員補給路を確立するための海軍力であり、最後に陸軍力になります。陸軍が38度線或いは中国国境付近の山岳地帯まで北上するであろうことを想定すれば、大量の陸軍兵士が必要となり、アメリカ本土から派兵されるでしょう。在沖海兵隊も戦地に赴く可能性はありますが、その場合海軍が佐世保から南下してピックアップする手間が生じます。(もちろん、中国の動向を気にして動かない可能性もあります)

 

よって、いざというときに真っ先に現場にいてほしいのは、海軍と空軍であり、加えて米本土から救援が陸続とやってくるということが、本当の抑止力となります。そのため、海兵隊を全軍撤退させる代わりに、海軍を八重山諸島(石垣島周辺)に海上自衛隊と共同配備する等が考えられます。共同配備が実現したら、それこそがアメリカの台湾防衛コミットメントへの力強いメッセージとなるでしょう。

 

少々脱線しますが、日本を含め多くの海軍はイギリス海軍のコピーと言われ、軍の中では最も「外交官的」要素を持つと言われています。(軍艦外交になる場合もありますが、友好の印として来航することもありますので)対し、空軍はパイロット集団なのでエリート思考が強く、かつ自由人的な性格を持つと言います。また、陸軍はその国の集団的性格がそのまま表れると言います。米海兵隊は、一番命知らずな集団なので、一番荒くれもの的性格を持つと言います。(最も「外交官的」要素がない軍種ですね)こうした軍種別性質が、日々基地に接する周辺住民の負担感をある程度左右します。

 

岸田首相はバイデン大統領に大幅な防衛費の増額をすると言いましたが、その防衛費に辺野古のぜいたくな埋め立て計画が含まれます。1995年当時から周辺情勢は変わっていますので、まず本当に在日米軍が現状に即したフォーメーションになっているのか、問うべきではないでしょうか?(もちろん、本気で中国と戦う覚悟がある場合ですが。この観点から検討するのはまた後日に。)

 




本コラムの執筆者

吉川 由紀枝 ライシャワーセンター アジャンクトフェロー

慶応義塾大学商学部卒業。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)東京事務所にて通信・放送業界の顧客管理、請求管理等に関するコンサルティングに従事。2005年米国コロンビア大学国際関係・公共政策大学院にて修士号取得後、ビジティングリサーチアソシエイト、上級研究員をへて2011年1月より現職。また、2012-14年に沖縄県知事公室地域安全政策課に招聘され、普天間飛行場移転問題、グローバル人材育成政策立案に携わる。

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