東京IPO

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Vol.93「今四半期決算発表でのIPO銘柄の見どころ」

株価形成は基本的な業績をベースにしていることは皆様も十分にご理解されているかと思いますが、業績の達成を四半期ごとに確認しながら評価がなされるのが今日の株式相場となっています。このところの決算発表でもサプライズのあった銘柄を中心に株価が大きく変動を見せていますが、IPOして間もない企業も通期に対する進捗度を確認しながらの株価形成がなされていますので、投資家の皆様も関心を寄せざるを得ないものと拝察致しております。

7月後半から8月上旬にかけては3月期決算企業の第1四半期決算の発表が見られるほか9月期決算の第3四半期業績、6月期決算企業の本決算発表が関心の的となります。各四半期決算では通期の見通しに対する進捗度を確認しながら評価がなされます。但し、企業のビジネス内容によっては進捗度が高いからと言ってそれを単純に高く評価することは間違いとなります。一方で本当にその進捗度が高いことが通期の業績にとってインパクトがあるのに会社側の慎重なコメントに左右されて株価が無反応な場合も起こりがちです。また、進捗率は売上が高くても利益が低い場合や売上が低くても利益が高い場合など様々なケースがあります。四半期決算の発表によって株価が短期的な変動を示す場合もありますが、余り惑わされずに中長期投資をベースにした評価をするべきではないかというのが筆者の意見です。

直近IPO銘柄も業績への不安感や四半期業績の進捗率の低さ、中には先行投資を優先して利益が抑えられての発表が見られるケースなど株価の調整トレンドが払拭できずに推移するケースもあります。長期的な成長よりも短期的な業績に評価の力点が置かれ過ぎている場合はむしろ中長期投資家にとっては投資チャンスだろうと思われます。

5月25日にマザーズに上場した仮想デスクトップのアセンテック(3565)は6月8日に発表した第1四半期が想定以上に好調で業績の上方修正が予想されたにも関わらず株価はIPO後の高値8450円から8月1日には4765円まで売られてしまいましたが、8月3日に中間期の業績見通しを上方修正。その結果、株価は大きく反転して参りました。

こうした事例は今後も見出せるものと考えられます。1-7月のIPO銘柄の中ではアセンテックのほか3月28日にJASDAQ上場のズーム(6694)にもそうした可能性が感じられます。同社は音楽用電子機器の開発・販売を行っており、世界市場に向けハンディレコーダーやエフェクターなどが拡大を見せています。今期第1四半期は前年同期や計画を上回る堅調ぶりでしたが為替変動の影響を受けやすい点から株価は上場後の高値2331円からは公開価格1520円に近い水準で推移。前提となる為替レートが1ドル=103円となっていることから第2四半期も引き続き堅調な業績となっているものと推察されますので見直される可能性が感じられます。潤沢な資金で研究開発を推進していく方針で外国人持ち株比率が17.7%と高水準。今期33円配当で配当利回りは1.9%。40円配当に増配の可能性もあり、財務内容良好でグローバル指向をしている潜在成長力のある企業としての可能性が感じられます。

このほか8月10日に本決算発表予定のネットマーケティング(6175・JASDAQ)も前期実績の達成度と今期見通しがポジティブとなるのかなど見どころは満載。上場後の株価は穏健な推移となっている点は逆に投資チャンスを内包していると評価されます。

2017年8月7日 東京IPOコラムニスト 松尾範久