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東京IPOトップインタビュー:(株)フィードフォース(7068・東マザ)

株式会社フィードフォース(2019年7月5日上場 /東証マザーズ:7068)


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フィードフォースロゴ


株式会社フィードフォースは、「データフィード」と「ソーシャルログイン(ID連携)」という2つの技術を強みに、マーケティング事業を展開する。大規模企業向けにはコンサルタントがオーダーメイドスタイルで対応するプロフェッショナルサービス事業、セルフサービスを選ぶ大企業と中小企業向けにはSaaS事業を提供する。ここ数年、同社が力を入れているのが、商品や顧客データ、ウェブサイトのコンテンツなど企業が蓄積するデジタルアセットをテクノロジーで利活用する支援として提供する、マーケティングのデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。安定感あるSaaS銘柄、DX銘柄と言われ、2006年の創業から事業成長とともにミッションも進化する同社。

「SaaSとDXの領域で大きく会社を成長させることと、成長しながら確実に利益を出すこと−−。この両方をしっかりと両立させていきます」と事業成長への思いを語る代表取締役社長の塚田耕司さんに話を伺った。




 

フィードフォース塚田氏

↑代表取締役社長 塚田耕司

“ながら”が楽しいオンラインショッピングの舞台裏

facebookやインスタグラムなどのSNSで目にする広告に、自分好みの商品が並ぶ。クリックして広告のページを開き、カートに商品を入れる。SNSを閲覧していたはずが、気がつくとオンラインで買い物を楽しんでいたという経験のある人も増えたのではないだろうか。

フィードフォースが強みとする「データフィード」と「ソーシャルログイン(ID連携)」は、こうした広告の裏で使われる技術だ。広告を出したい顧客企業が同社のサービスを利用する。大規模企業向けにはコンサルタントがオーダーメイドスタイルで対応するプロフェッショナルサービス事業、大企業と中小企業向けにはセルフサービスで運用できるSaaS事業を提供する。

企業も規模が大きくなるにつれ、部署ごとにワークフローも使うシステムも異なるという状況は珍しくない。おのずと扱われるデータは絡み合うかのように構造が複雑になる。こうした企業の個別性に寄り添うのが、プロフェッショナルサービス事業で、ここで生まれたソリューションを標準化したモデルがSaaS事業となる。

「データフィード」とは、大量に取り揃えた商品群から、消費者の趣味嗜好に合ったものをピンポイントで提示する技術で、その精度は購入などコンバージョン率を左右する。同社が得意とするこの技術は、膨大な商品・案件データを保有および更新する必要があるEC、人材紹介、不動産、旅行業などの業界での実績が高い。2020年1月にはリスティング広告やSNS広告などの運用型マーケティング広告を専門とするアナグラムが傘下に加わり、顧客の業界分野はさらに広がった。

「ソーシャルログイン(ID連携)」は、消費者がLINEやfacebook、AppleなどのIDを使って簡単にログインできる仕組みをいう。消費者にとって住所や名前などを改めて入力する手間が省けるだけではなく、導入する企業にとっては何億人ものIDを管理する高いセキュリティ技術に頼れるメリットは大きい。コストをかけて自社開発のログイン技術を開発したものの、後にセキュリティホールが発覚するという事態も避けることができる。

消費者に向き合うためのデジタルトランスフォーメンション

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、大手から中小に至るまで、独自の基幹システムを走らせる企業を中心に取り組まれている経営革新として理解が広がる。同社もデジタルマーケティングの領域で顧客企業のDXを支援する。

同社がDXに乗り出したきっかけは、2016年にサンフランシスコで開催されたFacebook Developer Conferenceに遡る。塚田さんはFacebookから招かれて参加したのだが、既存の業界の“当たり前”を覆すベンチャー企業の台頭に会場は色めき立っていたと振り返る。消費者は何を望み、それをもっと便利で手軽に使えるようにと考え抜かれたサービスは、瞬く間に利用者が増え、存在感を高めた。話題に挙がったのは、一般の人が旅行者に部屋を貸し出せる民泊サービスのAirbnbや自家用車をネットワークに配車サービスを提供するUberで、商流が確立したホテル業界やタクシー業界を揺るがした。いかなる業界であろうと、確固たる市場シェアを持っている企業ですらも、うかうかしていられない世界が広がっていることを塚田さんに印象づけた。

「マーケティングにおけるDXは、利用者が望むことと、手軽さや便利さなど使い勝手のよさの追究です。テクノロジーを武器に、既存の業界をドラスティックに変革させること。DXという時流に先乗りしないと生き残れない」と塚田さんは強く感じたという。これを起点に、同社のマーケティングDX支援が加速した。

“「働く」を豊かにする。” というミッションに込めた思い

「SaaSやプロフェッショナルサービスを提供することで、そのご担当者様が人間らしく、自分らしく働けるような環境づくりをお手伝いできたら」と、塚田さん。

同社は、設立10年目に“「働く」を豊かにする。”というミッションを掲げた。人の手で行うワークフローをテクノロジーに任せることができれば、例えば、その業務に費やす時間を、想像力が求められるような、人にしかできないクリエイティブな作業に使えるようになる。塚田さんは「本来、人が持っている力でやるべき仕事に時間を使って向き合えれば、仕事はもっと楽しくなるし、働くことが豊かになります」と、同社のサービスを使う顧客企業の付加価値につなげていきたいと話す。

以前のミッションは「消費者と企業をつなぐ」という視点を「架け橋」になぞらえ「企業が届けたい情報」が「消費者」に届くようにという思いを込めた“情報に新しい架け橋を”だった。創業以来、一貫して顧客企業のデジタルマーケティングを支援し、その過程でミッションを達成すべく様々なサービスを生んだ。設立10年目という節目に、次の成長ステージを見据え、社会に対してより広くより深く価値を提供しようと“「働く」を豊かにする。”を掲げた。

マーケティング広告はリアルタイムでパフォーマンスが見える厳しい世界。テクノロジーの活用で作業効率化や生産性向上ばかりを追いかけ、働く担当者の姿を見失うことのない社会づくりにも寄与するミッションと言えそうだ。

「自分たちで作った好きな言葉があります」と塚田さん。ミッションのほかにバリューを掲げ、仕事中も忘れないようにと社員と共有しているという。

4つのバリュー

  • 日々混沌(カオス)、日々進化

  • 10倍思考

  • チームファースト

  • アウトプットに愛を


とりわけ塚田さんが気に入っているのが「日々混沌、日々進化」。念仏のように唱える日もあるという。「とにかく変化が激しい業界なので、変化を嫌がるということは、負けを受け入れるということです。むしろ、そのカオスの中に自ら飛び込んでいけるような気概がないと、この業界での成長は望めない。逆を言えば、カオスの中に飛び込んでいければ、必ず突破できるし進化を遂げられるはずですから」と強調する。常に新しい技術と向き合い、一筋縄にいかない苦労もものともせずに乗り越えてきた塚田さんだからこそ「アウトプットに愛を」という言葉も生まれたのだろう。

(掲載日 2020年8月12日)


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