東京IPOトップインタビュー:(株)SERIOホールディングス(6567・マザーズ)
株式会社SERIOホールディングス(2018年3月2日上場/東証マザーズ:6567)
家族の数だけ需要がある。首都圏をはじめ人口が集まる地域を中心に実務経験を持つ主婦層をパートタイムの即戦力として企業に派遣する。働きやすさに併せて、子どもがすくすくと育つ環境を築いていくことを事業の柱に据え、学童や保育事業も展開。家族のライフステージに柔軟に対応するビジネスモデルが特徴。
↑代表取締役社長 若浜 久
「敬天愛人」天を敬い、人を愛する。若濵さんの座右の銘は、経営者として仰ぎ見る京セラの稲盛和夫さんが好きな西郷隆盛のこの言葉。実直に真面目にやっていれば、道は拓けるという信念のもと、2005年に起業した。
「私は小学校の時のサッカー部の先生のおかげで生きているようなものです」という自身の経験を次世代にも残そうと、子どもが健やかに育つ環境作りにも民間企業として貢献する。「親と子ども、その周りの人の幸せが、未来への橋渡しにもなる」という思いが事業の根底にあることが取材から伺える。
子育て世代では、父親が積極的に育児に取り組む「育メン」の浸透も進むが、まだまだ社会で働く女性に負担がかかる。社会の流れや働く人のライフステージの変化に柔軟に対応するため、就労支援事業、放課後事業、保育事業を展開するSERIOホールディングスの若濵社長に話を聞いた。
---- 起業の背景を聞かせてください。
人材派遣業界で培った経験を社会に還元できるような事業をしたいと考え、13年前に起業しました。私の経験の中で「子育てをしながら職につくのは難しい」という既婚女性の悩みを聞くことが多くありました。「毎日働けないけれども、 月に10日は働ける」とか「フルタイムは無理だけれども午前中だけなら働ける」という人材は数多。企業側にもこうした人材を起用できる業務はものすごくたくさんあります。
主婦層の「脱フルタイム」とも言える派遣スタッフはまさに「適材適所」を実現するためにあり、働き方改革の一つの道ではないでしょうか。派遣スタッフは、必要な時に活用できるスキルを持った人材であり即戦力です。柔軟な労働力として繁閑の差を補える存在でもあります。例えば、月末が忙しい経理の仕事を毎月同じ人が担当してくれれば会社もやりやすい。しっかりとキャリアを積んできた人がライフステージに合わせて活躍できるような社会は作れるはずです。
----? 2010年には小学生を対象とした学童にも着手しました。展開の背景を聞かせてください。
人材派遣へのこだわりはなく、仕事と家庭を両立するための支援事業を柱にしていますので、おのずと放課後事業、保育事業への展開につながりました。
地域によりますが、 公立小学校の学童は17時に終わり、延長をしても18時まで。学童を延長する親が18時に迎えに行くのは、現実的に無理があります。ここへ我々のような民間企業が参入したことで、22時まで延長できるサービス提供が可能になりました。
私学は、かつて富裕層の子どもたちが中心でしたが、少子化が進んだ今では、共働きのご家庭も増え、子どもを私学に通わせる傾向が高まっている。私立小学校の敷地内で放課後事業をさせてもらえた実績が、公立への展開に功を奏しました。私立も公立も、学童に参入する事業者がほとんどいなかったので、事業を推進することが潜在的なニーズの顕在化につながりました。
---- どうして子どもを育てる事業にこだわったのでしょうか?
私が起業した当時、少年犯罪のニュースが後を絶たなかった。犯罪をする子どもには何か必ず事情があると思う。幼少期の過ごし方はその後の人生に大きな影響を及ぼします。共働きが増え、ご両親と過ごす時間が限られた子どもたちに「学童の先生がすごく好きだった」とか一つでもいい思い出を持ってもらいたいと思いました。これからの社会を作っていくのは子どもたちですから、 私たちの世代がやれることはやらないといけない。子どもたちの成長を見守る社会をつくるのは大人の責任です。
---- 個人投資家にお伝えしたいことは?
就労支援事業は安定事業で、保育事業はバブルを迎えています。とはいえ、保育事業はこれからの5年が勝負です。無尽蔵に保育施設が増えることはありませんから、需要がひと段落すれば、業界再編の波がやってきます。また、保育の環境は動きが掴みやすく来期の数字も把握しやすい特徴があります。
民間事業者が保育事業に参入してからの歴史は浅い。大きく成長する会社は限られ、ほとんどが小規模に留まります。M&Aなどが起こりやすい市場であると捉えており、これに備えたポジショニングのために手を打っておかないと、生き残ることはできません。だからこそ、このタイミングでIPOを選びました。フルアクセルで、事業を成長させてまいります。
放課後授業については全国で約2万5千校が学童を実施しておりますが、民間事業者による運営は、5%前後に留まります。保育園に入っている子どもは学童に行く可能性が高く、保育園児の数が増えれば学童の人数は増える。保育園のように、小学校が新設されることはほとんどありませんが、学童の需要は増えることが見込まれます。これまで閉ざされていた市場が、解放されつつあるのが現状。我々が手がけているのは100数十カ所。これが千、5千にも広がる世界です。これからの5年、10年で大きく育つ市場です。
一貫した理念のもとで、ターゲットを見極めたビジネスモデルを築いてきました。就労支援事業、放課後事業、保育事業、それぞれに成長サイクルが異なり、それが弊社の事業成長の安定と成長のドライブです。
(掲載日 2018年4月2日)