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数あるテクニカル指標のなかで、最も一般に慣れ親しまれているものの一つが「移動平均線」です。
この移動平均線には、過去の一定期間の市場価格（通常は終値）を単純に平均化した「単純移動平均線」の他に「修正移動平均線」、「加重移動平均線」、「指数平滑平均線」など複数の種類がありますが、まずは単純移動平均線に注目することから始めればいいでしょう。

問題なのは移動平均線の「使い方」ですが…過去の偉人たちはちゃんと「こう使ったらいいですよ」という便利な方法を普遍的な形で幾つかの「法則」として私たちに遺してくれています。その一つが「グランビルの法則」。
既に十分ご承知のことと思いますが、ここであらためて確認しておくことにしましょう。

１９６０年に出版された著書のなかでジョセフ・Ｅ・グランビルは「日足チャートに２００日移動平均線を描画すれば、平均線によって平準化された市場価格の傾向線が示され、市場価格が上昇基調にあるのか、下降基調にあるのか、そのトレンドを知ることができる」として８つの基本法則を定めています。
この法則によれば、移動平均線と市場価格との間に見られる相互の関係から次に示す４つの「買い」サインと４つの「売り」サインを読み取ることができるというのです。

【買い①】移動平均線が下降した後に横這い、または上昇に転じたときに市場価格が平均線を上離れてきたら買い。

【買い②】移動平均線の上昇中に市場価格が移動平均よりも下方にまで下降する場合は買い。

【買い③】市場価格が移動平均線よりも上方にあり、移動平均線に向かって下降しているが、移動平均線を下抜けずに再び上昇に転じたときは買い。

【買い④】上向きだった移動平均線が下降に向い始めたとき、市場価格が急激に移動平均線よりも下方に向かった場合、市場価格は短期的にも移動平均線に向かって上げる可能性がある。ときに、この一時的な上昇は大幅なものになる可能性があるので買い。

【売り①】移動平均線が上昇後に横這い、あるいは下降し始めたとき、市場価格が移動平均線から下離れし始めたら売り。

【売り②】移動平均線が下降している最中、市場価格が移動平均線よりも上方に急激に上昇してきたら売り。

【売り③】市場価格が移動平均線よりも下方にあり、移動平均線に向かって上昇するも上抜けずに下降に転じた場合は売り。

【売り④】下降していた移動平均線が上昇に転じた後、市場価格が急激に移動平均線よりも上方に上昇した場合、市場価格は移動平均線に向かって下降する可能性がある。ときに、この一時的な下降は大幅なものになる可能性があるので売り。

グランビルは以上「８つの基本法則」のなかで、一般に最も重要とされるのは「買い①」と「売り①」であるとしています。

当たり前のことですが、過去２００日間の平均価格というのは、おおよそ市場参加者の売買平均コストに近く、その平均価格よりも市場価格の方が下に位置するということは、この期間に購入した市場参加者が平均的に損失を抱えているということです。
よって、市場価格が下方から移動平均線の近くにまで上昇してきた場合には、そこで戻り待ちの売りが出やすくなり、市場価格が移動平均線を上抜けるのは容易ではありません。

この売りをこなして市場価格が移動平均線を上抜くということは、何らかの買い（＝強気）材料が出てきたということ。さらに、市場価格が移動平均線を上抜けてくれば市場参加者は平均的に評価益を抱えることになりますから、買い方の心理は一気に強気度が増します。同時に、その時点で売り方に回っていた市場参加者は慌てて買い戻しに転じることとなり、結果的に「買①」のサインが現れると、その後しばらくは上昇基調が継続するということなのでしょう。