ここまでは、主に「金利」の観点からドル、ユーロ、円の力関係を見てきた。
いずれにしても、日米の金利が互いにゼロ近辺に張り付いた状態になったことで、金利は材料視されにくくなった。
金利が材料視されにくくなると、今度はとくに米国のファンダメンタルズが材料視されやすくなり、とどのつまりはファンダメンタルズを注視する米国の株価が外国為替相場でも材料視されやすくなる。
話は冒頭部分に戻るが、この年末年始の米国の株価は極めて好調な推移を見た。
振り返ると、12月30日のNY市場では、(米)12月の消費者信頼感指数が過去最低を更新し、同時に(米)10月のS&P/ケースシラー住宅価格指数が過去最大の下げを記録した。しかしながら、米財務省がGM傘下の金融会社GMACに50億ドルの公的資金注入、GM本体に10億ドルの追加融資を行うと発表したことで、NYダウは前日比184ドル高となった。
続いて12月31日のNY市場では、前週(27日まで)の(米)新規失業保険申請件数が事前予想を大きく下回ったことや米財務省の自動車支援策がより広範に渡るとの見方が拡がり、NYダウは前日比108ドル高となった。
年明け2日のNY市場では、(米)12月のISM製造業景況指数が28年ぶりの低水準まで悪化したものの、オバマ新政権が大規模な景気刺激策を実施するとの見方が強まり、NYダウは前日比258ドル高と9000ドル台乗せを達成した。
ここで注目したいのは、個々の米経済指標が決して強い内容を示すものではなく、むしろその多くが「過去最悪」とも言える水準であることが明らかになっているにもかかわらず、米国の株価は好調に推移しているということである。
もちろん、オバマ新大統領就任に対する「ご祝儀」的な買いが継続していることは言を待たない。ただ、その一方で過去最悪の米経済指標に対して、市場の反応が非常に薄くなっている=その大半を既に織り込んでいるのではないかと見られることも一つの可能性として念頭においておきたい。
仮にそうだとすれば、今後は「既にその大半を織り込んだ悪材料」<「自動車救済策やオバマ政策期待」という構図からNYダウの上値余地は拡大し、連れて日経平均株価の戻り余地も拡大、引いてはドル/円に一定のリバウンドが生じる可能性をも考慮する必要が生じてくることであろう。
12月3日(日本時間)現在、ドル/円は21日線を上抜け、一目均衡表(日足)の基準線をも上抜けてきている。今後、転換線が基準線を上抜け、さらに遅行線が日々線を上抜けてくる可能性も否定できない。十分注視しておかれたい。
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